着物・袴デザイン
振袖に用いられる「吉祥柄」はどんな柄?込められる意味や魅力を紹介

振袖は、未婚女性が成人式や結婚披露宴、卒業式、祝賀会、お見合いや結納、初詣などに着用する伝統的な礼装として親しまれています。
着物に描かれる模様には、人生の門出を祝い、飛躍や成功を願う意味を込めた「吉祥柄」と呼ばれるモチーフがあしらわれています。
それぞれのモチーフには幸せや繁栄を願う意味が込められ、縁起を担ぐために用いられるほか、厄除けのお守りとしても用いられてきました。
この記事では、振袖に描かれる吉祥柄の由来や意味を詳しく解説します。
吉祥柄の歴史や柄を選ぶポイントも取り上げていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
振袖によく用いられる吉祥柄とは?
振袖に用いられる吉祥柄とは、縁起の良いモチーフを柄に取り入れたものです。
女性の幸せや活躍、夫婦・家庭の繁栄のほか、幸せに至るように、健康で過ごせるようにといった願いが込められています。
吉祥柄の魅力
吉祥柄は、モチーフによって願いや意味が込められています。
模様のモチーフに目を向けないと、単なる「和柄」や「モダンなデザイン」としてしか見えませんが、色だけではなく描かれているものに注目すると、振袖ごとの物語性がさらに際立ちます。
振袖を選ぶとき、「どのモチーフが描かれているのか」「目立つ場所に配されているモチーフは何か」に注目すると、その振袖がもつ特徴や魅力をより深く理解できるでしょう。
吉祥柄の歴史
吉祥柄は、大きく「古典柄」と「モダン柄」に分けられます。
古典柄は、古墳時代から衣服に用いられてきたものもあり、伝統的なデザインが特徴です。
また、中国からもたらされた仏教にまつわるモチーフや、古代中国で縁起物とされたモチーフも、古典柄の一種に含まれます。
代表的な吉祥柄の種類と込められている意味
ここからは、代表的な吉祥柄の種類と、それぞれに込められた意味を見ていきましょう。
鶴(つる)
鶴は、古代中国の伝説で「千年生きる」とされる象徴で、長寿と幸福の象徴です。
日本でも健康や長寿を祈るための縁起物として、着物やお祝いの装飾に用いられてきました。
つがいになると相手を変えずに連れ添う習性があるため、夫婦和合や家庭の和合を表す際にも用いられています。
鶴の優美な姿や大きく羽ばたく姿は、将来への希望や飛躍を意味することもあります。
多くの縁起をもつモチーフで、結婚式や装飾など、お祝いの場面に広く取り入れられています。
鳳凰(ほうおう)
鳳凰は中国由来の神鳥で、繁栄を象徴する吉祥柄です。
炎や太陽とも結びつき、強さ・平和・安泰の象徴としても知られています。
日本では古来より皇族や貴族の衣服のほか、工芸品や絵画に取り入れられ、繁栄や平和を願う目的に利用されてきました。
雄雌一対で描かれる場合は夫婦円満や家庭運向上を願う意味をもち、儀式や宴にも用いられています。
蝶(ちょう)
蛹から羽化し、変化や再生の象徴として知られる昆虫です。
華やかな色柄をもつ蝶は美しさや愛らしさを表現するため、女性的なモチーフとしても取り入れられています。
鳥類と同じく大空に飛び立つ姿は希望を表し、お祝いごとの装飾や着物など布製品の模様に人気があります。
段階的に成長し大きく羽ばたく蝶の一生は、「将来の繁栄」や「飛躍」を象徴するとされています。
松竹梅(しょうちくばい)
松竹梅は日本の代表的な吉祥文様として知られ、お祝いの席や年賀の装飾など、繁栄を願うシーンにも取り入れられている柄です。
松は冬でも美しい緑色を保つ植物のため、「長寿」を表し、竹はまっすぐに伸びる特徴や成長力から「繁栄」を意味します。
梅は寒い時期に花を開かせる植物で、桜と同じく春を告げる花であると同時に「忍耐」や「希望」を象徴します。
いずれの植物も強さを表していることから、個人や集団を問わず、困難を乗り越えて幸せに至るといった意味があります。
桜(さくら)
桜は日本文化を象徴する植物のひとつであり、華やかさと美しさを兼ね備えたモチーフとされています。
春の到来を告げ、木々を美しい花で彩ることから、新しい時代や時期の始まり、幸せがやってくるといった意味をもつこともあります。
着物や和紙、小物のほかにも桜をあしらったアクセサリーやお菓子など、さまざまなものに取り入れられ、春を代表するモチーフのひとつといえるでしょう。
花が一斉に咲く様子から、家庭の繁栄や社会の調和を願う意味が込められることもあります。
椿(つばき)
椿は冬から春にかけて花を咲かせる花で、活力や生命力、繁栄を象徴する柄です。
椿の花は落ちても美しい形を保つことから、気品や高貴さ、運命の良い変化を象徴します。
日本では着物や工芸品に用いられ、茶道具や花瓶などの装飾にも人気です。
冬の寒さを耐え抜いて花を咲かせることから、「忍耐力」や「(忍耐の末の)幸せ」を意味することもあります。
橘(たちばな)
橘は、古代より縁起が良い果樹として重宝されてきた植物で、「長寿」や「子孫繁栄」を象徴します。
常緑樹かつ冬でも実をつけて落とさない強さが縁起物としての由来です。
平安時代には正月の装飾などに使われており、白い花を咲かせたあと黄色みがかったオレンジ色の実をつける特徴から、果実は太陽や光を象徴することがあります。
牡丹(ぼたん)
牡丹は小さな蕾から大輪の花を咲かせる特徴をもち、「百花の王」とも称される植物です。
大きく花が咲く豪華な姿から富の象徴とも考えられています。
日本では身分の高い女性が身につけるモチーフとして知られ、中国では牡丹の「丹」が不老不死の薬を意味するため、「長寿」を象徴し、貴族の装飾に取り入れられてきました。
お祝いの場はもちろん、着物や扇子・屏風・磁器・贈り物など幅広い用途に用いられています。
亀甲(きっこう)
亀甲は亀の甲羅の形を模した柄で、亀が千年生きるといわれるほど長寿命であることから「長寿」「健康」を象徴します。
亀の甲羅は体を守る盾のような役割をするため、古くから武具の柄に取り入れられたほか、着物にもあしらわれてきました。
長寿や健康の象徴として、「子孫繁栄」や「無病息災」を願う際にも用いられてきました。
七宝(しっぽう)
七宝は、円形を重ね合わせて連続させた独特の文様で知られています。
円形がいくつも連なる様子には「円満」「調和」「永続」といった意味が込められています。
仏教において、七宝は七つの宝を意味し、財運や幸福が永く続くようにと願って用いられてきました。
現在では着物や磁器、小物に描かれることが多く、彫り物やアクセサリーなどの民芸品・工芸品にも使用されています。
市松(いちまつ)
市松模様は、黒と白や赤と白などの2色の正方形を交互に配置した格子柄です。
男女を問わず身につけやすいシンプルなデザインで、日本では古代から存在し、調度品や工芸品、着物の柄に用いられてきました。
江戸時代の歌舞伎役者が衣装に採用していた柄としても知られ、規則正しい様子から「安定」「調和」といった意味をもつ柄です。
青海波(せいがいは)
青海波は波を重ねた模様で、平穏や幸福、そして永遠の繁栄を象徴する吉祥柄とされています。
波の連続が未来への広がりや安定を表すことから、家族や社会の調和、繁栄を願う意味があります。
着物や工芸品、屏風などに広く用いられ、波の文様がもたらす穏やかさと美しさから、平安や幸福の象徴として親しまれてきました。
麻の葉(あさのは)
麻の葉模様は、正六角形をベースに麻(あさ)の葉をかたどったモチーフを連続させた柄です。
麻は成長スピードが早く、まっすぐ大きくなることから、子どもの健康を願うとともに「成長」「厄除け」の意味をもちます。
古くから子どもの着物やお祝い事に用いられてきた柄ですが、大人に対しても「無病息災」を祈る縁起物として重宝されてきました。
正六角形を組み合わせて作られた幾何学的な模様は魔除けにも用いられ、現代でもモダンなデザインとして衣類や小物に使用されています。
矢絣(やがすり)
矢絣は羽根の形を模したモチーフを2色交互に配置したもので、「前進」「目標達成」という意味をもつ柄です。
武具である矢を取り入れていることから、古くは武士の装束に用いられてきました。
現代では男女を問わず、着物や袴の柄として用いられています。
矢がまっすぐ飛んでいく様子は前進を示しますが、「速さ」「的中」を連想させるため、「学業成就」や「成功」を願う柄としても親しまれています。
宝尽くし(たからづくし)
宝尽くしは、中国から日本にもたらされた仏教の経典に基づいてデザインされた吉祥柄です。
打出の小槌(うちでのこづち)・隠れ蓑(かくれみの)・鏡・金嚢(きんのう)・鈴・丁字(ちょうじ)・分銅(ふんどう)・隠れ笠(かくれがさ)などの宝物を組み合わせており、時代や地域によってモチーフが異なるものもありますが、いずれも「財」「幸福」「繁栄」を象徴します。
宝物とされる物を細かく組み合わせ、華やかな見た目が特徴的です。
結婚式やお祝い事で身につける着物や小物にデザインされることが多く、あらゆる幸せを願う柄として重宝されています。
御所車(ごしょぐるま)
御所車は、平安時代に貴族が使用した牛車をデザインした柄です。
貴族階級の移動手段であった牛車をモチーフにすることで「権威」「富」「繁栄」「高貴」を象徴します。
日本で独自に発展した古典柄のひとつであり、御所車に花をあしらった「花車(はなぐるま)」というモチーフも着物の柄として知られています。
熨斗(のし)
熨斗は「熨斗模様」とも呼ばれ、贈り物に添える熨斗鮑(のしあわび)をかたどった柄です。
細長い帯状の熨斗を複数重ねた「束熨斗(たばねのし)」は、見た目にも豪華な柄です。
一本ずつ異なる柄で描かれることもあり、鶴・青海波・松竹梅などの吉祥柄を描いた熨斗を束ねたデザインは、結婚や祝いの場面で活用されています。
扇(おうぎ)
扇は広げた際に末広がりになるため、行く先が大きく広がるという意味をもち、「繁栄」や「幸福」を象徴する柄です。
扇が開いていく様子は運が向いていく様子や拡大・発展を連想させるため、お祝い事や婚礼の装飾にも用いられてきました。
熨斗と同様に、モチーフの中に他の吉祥柄を描くことで、豪華なデザインや縁起の良い模様として描かれることもあります。
扇の中に牡丹や鶴、桜や松竹梅などを配したデザインは、着物や帯の柄に多くみられます。
手毬(てまり)
手毬は日本の古典柄のひとつで、着物などのデザインでは丸い球体の手毬が直接柄としてあしらわれています。
手毬は色鮮やかな模様の玩具で、「健康」「成長」を願う柄です。
また、子どもが丸々と育つようにとの願いを込めたり、丸く収まるようにといった意味も込められています。
着物の柄に取り入れられる場合は、桜や牡丹などの花、古典柄である扇などと組み合わせられます。
貝桶(かいおけ)
貝桶は、平安時代に宮中で流行した貝合わせという遊びに使用する容器をモチーフにした柄です。
御所車と同様に、平安時代の文化を継承した柄として、「富」「幸福」を象徴し、貝は2枚で1つの貝になることから「夫婦や恋人の和合・絆」を意味することもあります。
振袖の柄を選ぶ際のポイント
振袖の柄を選ぶときは、布地を体に当ててみるか、軽く羽織ってみて自分のイメージに合うかどうかをチェックしましょう。
体型や雰囲気にマッチしているものを選び、そのあとモチーフを一つずつチェックします。
お見合いなど成功を願う場面には扇や牡丹を、お祝いの席で着用する場合は松竹梅や花々をあしらった振袖がおすすめです。
デザイン以外では、季節感やTPO(着用するシーンや環境に合うもの)も確認すると良いでしょう。
吉祥柄の意味を理解して
今回は、吉祥柄の特徴やモチーフごとの意味、選び方について紹介しました。
振袖選びではファッション性を意識して、レトロやモダン、クールなど「なりたい姿」で選ぶことができます。
全体の色合いや小物とのバランスを意識しながら、吉祥柄の意味やデザインにもこだわってみてはいかがでしょうか。
アンジュでは多彩な色柄の着物を取り揃えておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者

中田和代
kazuyo Tanaka
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