着物・袴デザイン

矢絣(やがすり)とは?意味や由来・卒業式での活用まで

矢絣(やがすり)は、昔から卒業式や和装で親しまれてきたレトロな柄で、かわいい印象に惹かれる方も多いようです。まっすぐ伸びる矢のモチーフには、幸運や魔除けの意味があるとされ、着る人を前向きにしてくれます。

本記事では、矢絣の基本や由来、卒業式に取り入れるポイントなどを分かりやすく解説します。この機会に大正ロマンを感じる魅力を知って、和装や日常生活に取り入れてください。

矢絣(やがすり)とは?読み方など基本の意味・特徴

矢絣(やがすり)は、日本の伝統的な織物模様の1つで、「や」と「がすり」と読みます。絣(かすり)織りの技法を用いて表現される、矢羽根のような幾何学模様が特徴的です。
V字型の連続したデザインは、整然とした美しさと凛とした印象を与えます。

この矢絣について、以下3つの観点から解説します。

  • 矢絣の歴史と由来:女学生から大正ロマンへ
  • 矢絣が縁起物とされる理由
  • 矢絣と矢羽根の違い

それぞれの特徴を理解することで、矢絣の奥深い魅力がより一層感じられるでしょう。

【関連記事】矢絣柄ってどんな柄?袴レンタルで人気の理由

矢絣の歴史と由来:女学生から大正ロマンへ

矢絣は、弓道や破魔矢など弓矢文化を背景に発展した文様とされ、江戸時代から伊予絣(愛媛県)や、久留米絣(福岡県)などの地域で広まった伝統的な織物模様です。

明治から大正にかけては、女学生の間でも人気を博し、袴姿に合わせて着用されることも増えました。

まっすぐ飛ぶ矢のイメージは進歩や前進といった価値観にも通じ、大正時代には学生服としても親しまれました。現在でも卒業式やイベントなどで着用されることが多く、どこか懐かしくも新しい印象を与える柄として根強い人気を得ています。

明治・大正期の雑誌や小説には「ハイカラさん」の装いの一部として描かれることもありましたが、もともとは庶民の日常着として広く使われてきた柄です。

矢絣が縁起物とされる理由

矢絣が縁起物とされる背景には、「まっすぐ進む矢」が「目標を外さない」象徴として古くから重んじられてきたことが関係しています。魔除けとして神社で授与される破魔矢とのつながりも指摘され、厄をはらい、幸福をもたらす柄として受け継がれてきました。

また、矢が射抜く動きには成功を射止めるというポジティブなイメージがあり、人生の節目に着用すると新しい一歩を踏み出すお守り代わりになるともいわれます。

実際、卒業式や成人式など大切な行事で矢絣が選ばれるのは、こうした縁起のよい意味合いが大きな理由の1つです。時代が移り変わっても、背中を押してくれるような文様として人々に愛されています。

矢絣と矢羽根の違い

「矢羽根」は弓矢の羽根そのものを指す言葉であり、「矢絣」はそこから連想された連続模様を指す場合が多いです。見た目には似ていますが、矢羽根は実際の道具として機能する羽根を示すのに対し、矢絣は意匠やファッションとして使われる図案です。

そのため、矢羽根が単体の形を強調するのに対して、矢絣は同じモチーフを何度も繰り返して柄全体を構成します。また、矢絣はまっすぐ伸びるラインによるスッキリとした印象が魅力で、着物や袴に合わせると洗練された雰囲気を演出できる点が特徴です。

矢絣柄が人気の理由

矢絣柄は古くから親しまれてきた伝統文様ですが、現代でも多くの人に愛され続けている理由があります。その魅力は単なる伝統や縁起のよさだけではなく、時代を超えて人々の心を引きつける普遍的な要素を持っています。

矢絣柄の人気の秘密について、以下3つの観点から見ていきましょう。

  • レトロでかわいい大正浪漫イメージ
  • 季節やシーンを問わない高い汎用性
  • 『鬼滅の刃』などアニメ・漫画の影響

詳しく解説します。

レトロでかわいい大正浪漫イメージ

矢絣柄が持つレトロさは、その長い歴史に由来します。江戸時代からの伝統柄でありながら、大正時代には女学生の装いとしても取り入れられ、どこかクラシカルでノスタルジックなムードを生み出します。

とくに赤と白のコントラストがはっきりした矢絣は、写真映えする視覚的インパクトも魅力です。

また、大正浪漫という言葉から連想されるハイカラさんやモダンな文化は、現代の感性と融合してさらに新鮮な印象を与えます。

実際、卒業式の袴姿などに取り入れることで、昔ながらの伝統に触れながらも、今のファッションセンスに合った華やかさを演出できる点が人気の理由です。

季節やシーンを問わない汎用性

矢絣柄は、卒業式や成人式だけでなく、浴衣や普段着のアクセントとしても取り入れやすい点が特徴です。

そのまっすぐなラインと繰り返しのあるパターンは派手になりすぎず、どのような色や生地とも相性がよいため、季節やシーンを選ばず着こなしを楽しめます。

たとえば、春先は明るい色合いの矢絣で軽やかに、秋冬は深みのあるトーンでシックにまとめるなど、色や素材の工夫次第で幅広いコーディネートが可能です。

さらに、帯や小物を変えるだけで雰囲気をガラリと変えられるので、着物初心者から上級者までアレンジがしやすい柄として重宝されています。

『鬼滅の刃』などアニメ・漫画の影響

近年では、『鬼滅の刃』をはじめとした人気アニメや漫画の和服スタイルが注目を集め、その中で矢絣柄も再び脚光を浴びています。作品のキャラクターが着用している着物や羽織が矢絣に似たパターンだったり、同じモチーフを用いていたりすることで、若い世代にも馴染みのあるデザインとして浸透しました。

従来は「レトロでかわいい」印象が中心でしたが、アニメの影響を受けて「かっこいい」「個性的」といった評価も増えてきたのが特徴です。

実際、コスプレや舞台衣装などにも取り入れられ、和洋折衷の新しい楽しみ方が広がっています。こうした文化と結びつくことで、矢絣は世代を超えて親しまれる柄となりました。

卒業式・袴・着物での矢絣コーデ

矢絣柄はとくに卒業式の袴スタイルで人気がありますが、その他の和装シーンでも活用できる万能な柄です。どのように取り入れればよいのか、また誰が着用しても問題ないのかなど、具体的な着こなし方について知りたい方も多いでしょう。

ここでは矢絣を活用した和装コーディネートについて、以下3つの観点から解説します。

  • 矢絣×袴の基本コーデ
  • 矢絣は卒業式はダメなの?
  • 男性・年配層もOK?年齢や性別別のポイント

これらを理解することで、あなたにぴったりの矢絣スタイルが見つかるはずです。

矢絣×袴の基本コーデ

矢絣と袴を組み合わせる際のポイントは、色のバランスと柄の見せ方です。たとえば、赤×白の矢絣に黒い袴を合わせる王道のスタイルは、卒業式で定番ながらも華やかさが際立ちます。

反対に、落ち着いたグレーや紺などの矢絣柄を選べば、少し大人っぽい雰囲気を演出できます。

さらに、帯や小物のアクセントとしてゴールドやパール系を取り入れると、上品さが加わるでしょう。柄の大きさにも注目してみるとよく、大きめの矢羽根は存在感を高め、小さめの柄はシンプルで品のある印象を与えます。

全体的には袴の丈感や裾さばきにも気を配りながら、ほどよくレトロ感を引き立てることが、矢絣×袴を楽しむコツです。

矢絣は卒業式はダメなの?

「矢絣は学生服っぽいから卒業式には避けたほうがよい」という意見がありますが、実際にはマナーや格式面で問題になることはほとんどありません。

むしろ、大正時代に女学生が好んで着用した歴史を背景に、卒業式の定番柄として根強い人気を誇ります。

矢絣は前進や目標達成などのポジティブな意味合いも持っており、旅立ちのシーンにはぴったりのモチーフといえます

ただし、多くの人が着用する分、ほかの卒業生とかぶる可能性が高い点には注意が必要です。個性を出したい場合は、小物や髪飾りにこだわりを取り入れて差別化を図るとよいでしょう。

男性・年配層もOK?年齢や性別別のポイント

矢絣と聞くと若い女性向けの柄というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実際は男性や年配層にも取り入れやすい柄です。男性が着物や羽織に矢絣を取り入れる場合は、シックな配色を選ぶと落ち着いた大人の雰囲気が楽しめます。黒や濃紺、深い緑などの矢絣柄なら、派手さを抑えつつも独特の存在感を演出できるでしょう。

年配の方も、あまりコントラストの強くない配色を選べば、気負わずにレトロ感を味わえます。たとえば、ベージュ×茶色や淡いグレー×紺色など、グラデーションに近い色使いが上品な印象を作ります。こうしたコーディネートの工夫次第で、年齢や性別に関係なく矢絣を上手に着こなせるのです。

矢絣は縁起のよい伝統文様でレトロ感が魅力

矢絣は、歴史的背景や縁起のよさ、大正時代の華やかな雰囲気など、さまざまな要素が組み合わさった柄といえます。卒業式の定番イメージがある一方で、配色や合わせ方によって、普段の和装やカジュアルなシーンにも柔軟に取り入れられるのが魅力です。

柄の大きさや色の組み合わせを工夫するだけで、同じ矢絣でも雰囲気が大きく変わります。新しいアレンジに挑戦してみると、伝統のよさを味わいつつ、自分だけのスタイルを作りやすいはずです。ぜひ好みやライフスタイルに合わせて、矢絣の魅力を楽しんでください。

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※この記事は公開当時の情報を元に作成されています。 レンタルプラン・商品情報・金額などに関しては年度ごとに異なる可能性があり、 記事内には取り扱いのないサービスが含まれていることがございます。 ご予約の際は最新の情報をご確認ください※

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この記事の監修者

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中田和代

kazuyo Tanaka

《資格》

日本和装教育協会
専門科 高等師範科 修了
教授科 修了
講師資格 (師範)
花嫁科 修了
時代衣装科 修了
プロデュース科 修了

一般社団法人全日本着付け技能センター
着付け技能士1級